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![]() ★第12回★「リアリティというリアルな暴力。の巻」 ![]() 事故のような衝撃。 突然の吐き気。 食欲の低下。 不眠と生あくび。 焦燥感。 疑問。 嫌悪。 不安。 虚ろ。 過剰で熱狂的な孤独。 私が確かに傍観者であったのはどこまでか? 気づくと真っ黒な口が目の前に開いている。 取り込まれそうになる一瞬は、すでにやってきている。 その避けがたい吸引力は、現実を私から引きちぎろうとして暴れる。 私はかろうじて現実にしがみつき、かみつくようにして話す。 言葉を。私の言葉を。しゃべる。泡を飛ばして。声を出す。 口内が乾いて、でも粘つく。熱い。 半ば躁状態のまま、とめどなく湧いて出る言葉を放出する。 いけない、だめだという悲鳴が、自分の内側でこだまするから。 恐怖という名の快楽が、暴力という名の欲求が、そこにあると見えてしまうから。 自分がいる“ここ”が実はどんなにかあやふやで不確かであるという現実は、どんなに頭の中で明確に理解していても、誰だって見たくないし知りたくないのだ。 そうして、ああ本当に見たくなかったし知りたくなかったと気づくのは、いつだって“その後”なのだ。 考えるなと命じる脳ほどあてにならないものはなく。 体からは冷たい熱にうかされて汗がしたたり落ち。 自分にとって最も嫌なことを、全身が感じ考えているのがわかる。 屈服。 傑作だ。 夢中で読みながら、必至で読むのをやめたくなる。 こんなにかき回されたのは、いつぶりだろう。 2008・10・14 『真説 ザ・ワールド・イズ・マイン』/新井英樹/エンターブレイン2006 ![]() |
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