私的読者記録大公開 みよの読書日記



★第9回★「ゾウをのんだウワバミ。の巻」


『星の王子さま』(サン=テグジュペリ・作/内藤濯・訳/岩波少年文庫)に登場する、この有名すぎるモチーフ(と言ってよいのかしらん)に、わたしも以前から強く惹きつけられている1人である。
※ちなみに作品中では「ゾウをこなしたウワバミ」として登場する。この訳、相当に素敵だと思う。

食物連鎖のシステムに逆らうかのごとくあるこの状態、かなり珍妙な状況だと思うのだけれど、怖さや不気味さといった衝撃の類は何故か感じない。
どこかユーモラスで、不思議に印象的なのだ。
この感覚はなんだろうと、そういえばずっと思っていた。

『やがてヒトに与えられた時が満ちて……』(池澤夏樹・著/河出書房新社)は、わたしの2008年最初の一冊だ。この中で久しぶりに「ゾウをのんだウワバミ」と再会した。

彼はわたしに『やあ!』と言った。
わたしがそれと気づくまで何度も。
これは「わたしはあなたに友人として声を掛けますよ。お元気ですか?わたしは元気です。これからも仲よくしましょうね。そういう意味を全部一語に収め(本文より)」た『やあ!』だ。
わたしも彼に『やあ!』と返した。
わたしたちは再び出会った。
それはとてもよい再会だと思えた。

「人間的な感情によって、あっさりと不可知論の壁を超え(本文より)」ることの美しさと尊さ、見ようによっては愚かさが、わたしにはしっくりくる。

ヒトがそうであったかなかったか、あるかないかという定義はできない。
わたしはわたしにおいてのみ語ることができるだけだ。
有意義な邂逅であったことを一人称で記すだけだ。

わたしが考え続けてゆこうと思うことの1つが、確かにそこにある。

2008年1月3日



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