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![]() ★第7回★「YES/NOの選択はいつも難しい。の巻」 ![]() たとえば、YESと言い続けるという決意があったとする。 それがポジティブに力強く、かつ明るい響きを持って誰かの口から語られたとする。 ちょっといいじゃん、と、思わないだろうか。 そういうのちょっといいじゃん。と。 さて。 この小説に出てくる「情」という小説家は、NOと言わない。 「情さんは絶対にNOとは言わないのよね」と口にする女たちによって、それは語られる。そこはかとない諦念をにじませつつ、けれど嬉々として語りたがる女たち。 途端、先ほどのYESと言う決意は力を失うかのように見える。 意気消沈するように。 そのまっすぐさをどこかで恥じ、目をそらすように。 本人による決意と、第三者による語りだという違い以上に。 YESと言うことは、絶対にNOと言わないことと同義だろうか。 おそらく、同義ではない。 私が注意深い口調になるのは、すでに影響を「受けてしまった後」だからだ。 気づいた時にはもうその肯定は過去のもので、だから状態としては今が「そう」なのだ。 影響を受けると、露悪的になる。 情が好むところの「羞恥を忘れていない」の対極だ。 わからないから、曝け出す。 暴力的に、悲哀を持って、ユーモラスに。 NOと言わないことは、けれどYESでもある。 私は曖昧に笑いながら、答えを探し始める。 絶対にNOと言わないことなどできないなら、どうするか。 うーん。 どうしよう。 『愛情』/花村萬月/文芸春秋2007 ![]() |
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